新しい酪農の在り方を求めて情熱を注ぎ、
チャレンジする面白さを感じている二人の場長たち。
酪農や農業で報われる仕事ができるように、
日本の一次産業をより確かなものにしていくことができるように、
それぞれが酪農家として明確な使命を持ち、
人のために、牛のために、明日のために力を尽くしています。
吉浦牧場・本場長 田村雅登
生産性の向上と効率化にこだわって努力し、新しい仕組みを作ってきたということが、吉浦流の酪農経営だと言えると思います。自家育成に切り替えたことで、牛の改良に力を注ぐことができたし、牛の頭数が増えたことによって、出産後の一番ミルクの量が多い時だけを搾乳して一頭当たりの乳量を増やしたり、2カ月が常識の乾乳期間を、それよりも2週間から4週間長く休ませて生産寿命を延ばしたり。そうやって、安定して高い利益が出る経営体質を作り上げてきたんです。すべては、報われる酪農を実現するためです。
どれだけきちんとやっても、病気や難産で牛が死んだら終わり。いつもみんなが100点を取れるわけじゃないんですね、酪農の仕事って。だからこそ、報われる酪農をめざしてきた。スタッフの生活をよくするために、何年たったら給与はこれだけ払えるようにしたい、じゃあそうするには何をすればいいのかって。今でもその考え方に変わりはありません。これからも新しいアイデアを求めて、果敢に挑戦していきたい。吉浦牧場はまだまだ発展途上ですから。人のために、牛のためにもっとできることがあるはずだと、そういう思いでやっています。
私たちのこの牧場経営に魅力を感じて集まって来てくれたスタッフたちには、吉浦流の酪農を包み隠さず、すべてを教えています。私を信じて吉浦牧場に来てくれたからには、これからの人たちに酪農のことも、経営のことも、しっかりと勉強して成長して欲しいと思っているんです。後継者になってくれるリーダーを育てることだけが目的じゃなくて、全国各地から集まってくれたスタッフ一人ひとりに“自分の武器”と呼べる力を持てるように成長させてやりたいから。本気でそう願っています。
吉浦牧場世羅つくし分場・場長 田村勇耕吉浦牧場世羅つくし分場・場長
田村勇耕
広島にある世羅つくし分場は、10年目に入ったばかりの牧場ですが、島根の本場で30年かけて牛を増やしたところを10年でやり遂げ、現在1200頭近くの牛を飼育しています。それが実現できたのは、本場が長年にわたり培った自家育成のノウハウを土台に、“新しいもの好き”という私の好奇心から、スタッフみんなの意見をどんどん取り入れて、新しいことにチャレンジしてきたからだと思っています。新しいやり方や新しい分野に挑戦するのは、一般の会社で考えれば普通のこと。牧場の経営だって同じです。
例えば、子牛の牛舎だけ屋根の材質を変え、さらに換気の仕方を工夫していることもその一つ。これは、寒暖の差が大きい世羅の気候を考慮したもので、夏の暑さ対策のためのアイデア。また、生まれたばかりの子牛を集中して管理できるように、従来のものより広くコンパクトなケージを海外から輸入したので、新しく完成した哺乳育成牛舎での試用を楽しみにしています。ほかにも、“面白そうだからやってみよう”ということで始めた和牛の受精卵移植も順調で、次に目標としている自家採卵も実験段階に。いつかは和牛の肥育・出荷まで手掛けてみたいですね。そんな大きな夢も描いています。
新しく和牛育成や農園にも取り組む吉浦牧場ですが、柱はあくまでも酪農です。年々、私の中で強くなるのは、「一次産業をもっとしっかりとしたものにしたい」という思いです。というのも、農業先進国と呼ばれるヨーロッパなどは機械化がとても進んでおり、日本も追いついてはきましたが、まだまだの状況。日本の一次産業のレベルアップに力を尽くすこと、それが私の目指すものですね。現状に満足せずに追求していけば、新しいことは次々と出てきます。そして、正解は決して一つではないところに牧場経営の醍醐味を感じています。